学校の授業やイベントで使う「教育プログラム」。みなさんは、どんな風に作られていると想像しますか?
分かりやすいスライド、きれいな映像……もちろんそれらも大切です。
でも、私たちがプログラムづくりで一番大切にしているのは、「現場の生徒たちがどう反応したか」というリアルなデータと声です。
今回は、私たちが企画・ファシリテーション・効果測定までを担当した「GREEN×EXPO 2027(横浜国際園芸博覧会)探究学習プログラム」の実証授業を例に、ひとつの教材が「生きたプログラム」へと育っていく裏側をご紹介します。
今回の目的は、高校生たちに環境課題への理解を深めてもらい、2027年の園芸博へのワクワク感を持ってもらうことでした。
ここで最初の壁となったのが、「サーキュラーエコノミー」「ネイチャーポジティブ」といった専門用語です。探究学習を進める上で、こうしたキーワードの理解は必須の土台となります。
しかし、高校生にとって普段あまり聞かないテーマに対し、いかにして興味関心を高められるかが、教材設計の大きなポイントでした。
さらに重要な視点がありました。それは「全国の学校で展開した際、どんな先生でも進行に困らない教材にする」ということです。
そこで私たちは、企業のリアルな取り組みを分かりやすく伝える映像を用意し、専門用語を嚙み砕いたワークシートを補助線として設計。生徒を惹きつけつつ、先生がスムーズに授業を回せるパッケージを作り上げました。
この教材を使って、計340名の生徒たちに実証授業を行いました。そして授業後のアンケート結果を見て、私たちはハッとしました。
「今日の授業を受ける前、あの言葉を知っていましたか?」という質問に対し、なんと約8割の生徒が「全く知らなかった」と回答したのです。
現場は、私たちが想定していた以上に「関心・知識なし」からのスタートでした。しかし、同時に出た評価スコアを見て胸をなでおろしました。
私たちが初期設計でこだわった「用語の補助」と「リアルな企業の映像」が見事に機能し、難しいテーマが「自分の未来に関係する面白い話」へと変わった瞬間でした。
普通なら「大成功!」で終わるかもしれません。
でも、私たちはさらにアンケートデータをじっくり読み込みます。
学習意欲を測る「ARCSモデル」で分析してみると、全体的にスコアがとても高い中で、「これから自分に何ができるか、具体的なイメージが持てたか」という項目だけがほんの少し低く、自由記述には「映像を見ていて少し中だるみした」という声が隠れていました。
そこで私たちは、次の授業に向けてすぐにプログラムを「マイナーチェンジ」しました。
①ただ見る映像から、探す映像へ:
映像を見る前にキーワードを解説し、「映像の中からキーワードを探しながら見る」というアクティブなスタイルに変更。
②意味のサンドイッチ構造:
授業の最初と最後に、園芸博のコンセプト(地球と。咲きに行こう。)の意味を、自分なりに考え直してもらう時間を追加。
迎えた次の実証授業。結果は驚くべきものでした。
「受講してよかった」「考えを深められた」「新しい発見があった」といった主要な評価項目で、
ポジティブな回答がなんと【100%(全員)】に到達したのです。
ネガティブな評価は全12項目において「0件」。前回の課題だった「具体的なイメージが持てたか」のスコアもぐんと跳ね上がりました。
生徒たちの感想を見てみると、
「映像を見てメモをするのが集中できて良かった。知識を入れてから思考するサイクルが分かりやすい」
「最初に知識なしでコンセプトを考え、最後にもう一度考え直す構成がいい」
私たちがこだわって修正した小さなポイントが、そのまま生徒たちの「楽しさ」や「分かりやすさ」として真っ直ぐに届いていました。
教材やプログラムは、机の上で作って完成ではありません。
全国の先生が使いやすい緻密な初期設計。そして何より、現場の生徒の小さなつまずきを見逃さないデータ分析と、すぐに次の授業へと反映させる柔軟な改善力。これらが合わさって初めて、人の心を動かす「生きたプログラム」になります。
「作って終わり」ではなく、現場のリアルな声と共にプログラムを育てていく。
私たちがいつもワクワクしながら取り組んでいる、教育現場づくりの裏側でした。
※今回制作している教材は最終調整中です。完成しましたら改めてお知らせいたします。
末筆ではございますが、本プロジェクトにご協力いただいたすべての方々に感謝を申し上げます。
率直な声を聞かせてくれた生徒の皆さん、授業実施にご尽力いただいた先生方、素晴らしい事例をご提供いただいた企業の皆様、そして国際園芸博覧会協会ならびに神奈川県教育委員会の皆様のお力添えがあってこそ、この教材は完成へと至りました。心より御礼申し上げます。